転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


220 魔石の乾電池を作ろう!



「どこに書いてあったかなぁ?」

 僕は前にイーノックカウでお父さんに買ってもらった魔道具の本をペラペラとめくってたんだ。

 何でかって言うと、今から作ろうと思ってるものに、この本に書いてるはずの内容が必要だからなんだ。

「あっ、あった! これだ」

 結構後ろの方まで呼んでたのに、中々出てこないからこの本じゃなかったっけ? って一瞬考えたけど、ちゃんと見つけられて一安心。

「あ〜よかった。これが解んなかったら、作れないもんね」

 この魔道具の本の中で、僕が探してたのは魔力を通しやすい素材ってページなんだよね。

 何でかって言うと、今僕が作ろうとしてるものにはどうしてもこれが必要だったからなんだ。


 色々と調べてみて解ったのは、魔道具に使ってる魔石は外せないけど、その魔石に魔力を供給する魔道リキッドのビンは外しちゃっても大丈夫だってことなんだ。

 だってビンの方は外しちゃったとしても、もういっぺん繋いちゃえばまた魔力が魔道具に供給されるようになるからね。

 だったらさ、その魔力の供給を魔道リキッドじゃなく他の魔石でやれないのかなぁって、僕は考えたんだ。

 そうすればその魔石が魔力を使いきっちゃったら、また別の魔石をそこにくっつければいいからね。

 でもね、それには一つ大きな問題があるんだ。

 それは魔物から取れる魔石が全部形や大きさが違うって事なんだよね。

 多分今まで誰もこれをやってみようって考えなかったのは、これを解決でき無かったからだって僕は思ってる。

 これがもし魔石になんかしたら形が変わるとかだったら、きっと誰かがもうやってたと思うんだよね。

 でも魔石って割ったり削ったりはできないから、方家を変える事はできないみたいなんだ。

 これは魔道リキッドを作る時の行程を考えてみれば解る事なんだけど、魔道リキッドって魔石の中心部に魔力を注いで活性化させて、その状態で溶解液に入れることで現役が出来上がるよね?

 要するに魔石ってのは魔力の塊の周りを硬い膜のような物で包んでできてるって事だから、形を変えようとするとその膜が壊れて使えなくなっちゃうんだ。

 だって魔力が活性化したら、その破れた所から魔力が流れ出しちゃって魔道具がうまく動かなくなっちゃうからね。


 魔石の形が変えられないとなると、そこから魔力を取り出すには毎回魔道具に繋ぎなおさないとダメなんだ。

 それってとっても面倒だよね? それに魔道リキッドなんていう便利なものがあるんだから、わざわざそんな事をやろうなんて誰も考えなかったんじゃないかなぁ?

「もし誰かがどうにかできないかなぁ? って思ってたら、できて無いのはおかしいもん。こんな簡単なものなんだから」

 僕はこれから作ろうと思ってるもののことを思い浮かべながら、そう考えたんだ。


 前の世界にはねぇ、なんと魔道具が一個も無かったんだ。びっくりだよね。

 じゃあみんなどうして他のかって言うと、機械ってのを使って魔道具の代わりにしてたんだ。

 その機械ってのは魔力の変わりに電気ってので動いてたんだけど、前の世界ではその電気ってのを乾電池って言うちっちゃな筒に入れて持ち運ぶ事が出来たんだよね。

 そう、僕はこの乾電池ってのを魔石を使って作れないかなぁ? って思ったんだ。

 魔石の形は変える事ができないけど、入れ物の形はどんな風にでも変えられるもん。

 だからね、後は簡単にその入れ物を魔道具に付けたり外したりできれば、乾電池とおんなじように使えるようになるはずなんだ。


 この魔石版乾電池、結構簡単に出来るんだよね。

 だって魔石から魔力を取り出す回路図はもうあるんだから、ちっちゃな筒に魔石を固定して、そこから回路図で取り出せばいいんだもん。

 それに魔力がなくなった後は、その回路図を通して魔力を注いでやればまた使えるようになるんだよね。

 魔石は魔力が少なくなるとくすんで来るから、魔石が筒の外からでも見えるようにしてやれば取替え時もすぐに解るし、同じ大きさの物をなんかか作っておけば、外してすぐに次のが付けられるから魔道リキッドみたいに使えるようになるはずなんだ。

 でね、この魔石版乾電池に必要になるのが、僕が魔道具の本で探してた魔力を通しやすい素材なんだよね。

 だって魔石が入った筒を作っても、そこから魔力を取り出せなかったら意味無いもん。

 だから筒とそれを取り付ける魔道具、その二つを繋ぐ場所にはこの魔力を通しやすい素材と言うものが絶対に必要だったんだよね。


「そっか、やっぱりミスリルとかオリハルコンが一番なんだね」

 前にロルフさんたちが魔法の武器を作るときはこれを使うって言ってたけど、やっぱり魔力を通しやすいんだね。

 でも、流石にこんなのを使えるわけが無い。

 だから僕は他にも何か無いかなぁって、先を読み進めたんだ。

「へぇ〜、鉄は殆ど魔力を通さないんだね。あっ、銅もあんまり通さないのか」

 金属で言うと、金や銀、それにプラチナとかは魔力をよく通すんだって。

 でもそんなのばっかり使ったらとっても高くなっちゃうよね。だから、別の方法がこの本には書かれてたんだ。

「銅とか鉄に金とか銀を混ぜて使ったりできるんだ。それにミスリルとかなら、真ん中にちょこっと使うだけで魔道具にできちゃったりするんだね」

 金とかは柔らかいから武器に使えないでしょ? だから鉄とかに混ぜて使ったり、溝を掘って、そこに流し込んだりして魔法の武器を作る事もあるんだって。

「って事は魔石版乾電池を作ろうって思ったら、鉄に金か銀を混ぜたのを使えばいいってことかな?」

 この本によると、どうやら銀よりも金、金よりもプラチナの方がよく魔力を通すんだって。

 だったら値段は高いけど、金を使った方がいいよね。

 ただ、僕は金なんて持って無いんだよなぁ。

「お母さん、持って無いかなぁ?」

 そう思った僕は、一度部屋を出て台所へ。

 そこにいたお母さんに聞いてみたんだけど、

「あるわよ」

 そしたら、あっさりとこう言われちゃった。

 僕は知らなかったんだけど、この村の近くにある森の中を流れてる川ではちょびっとだけど砂金が取れるんだって。

「みんなね、これを知ると初めは取ろうとするのよ。でも、川に入って砂金を探すより獲物を狩った方がお金になるから、みんなすぐに飽きちゃうのよね」

 お母さんと一緒に居たヒルダ姉ちゃんが言うには、村の女人は森に入れるようになるとみんな一度はやってみようって考えるんだって。

 でも森の中の川はお水が冷たいし、1時間くらいやっても全然取れない事もあるからみんなやらなくなっちゃうんだってさ。

「そうそう。だからうちにあるって言ってもほんの少しよ。でも、なんに使うの?」

「乾電池に使うんだ!」

「かんでんち? う〜ん、よく解らないけど、そんなに価値のあるものでも無いし、いるんなら出してあげるから使いなさい」

「やったぁ!」


 こうしてちょびっとの砂金を手に入れた僕は、早速作業部屋へ。

 最初の一個だから失敗するかもしれないけど、作ろうって思ってるものとおんなじことができないとダメだからって、前にブレードスワローから獲れた大豆くらいの魔石を机から取り出して、それを鉄の板に固定してから魔力を取り出す魔道回路図を書いていく。

 それが出来上がったら今度は小さな筒を作ってその板を中に固定。

 その時に魔石が外から見えるように穴をあけておいた。こうしたら、魔力が無くなってきたらすぐに解るからね。

 でね、最後にさっきの砂金と鉄を使ってクリエイト魔法で作った合金を回路図版に繋いでそれがむき出しになるように筒の前と後ろを塞げば魔石版乾電池の完成だ。

「ええと、実験は……簡単だし風車の魔道具で作ればいいか」

 これなら一番小さい一角ウサギの魔石でも作れるって事で、回るとこと魔石を取り付けた回路図、それにさっき作った魔石版乾電池をはめる場所だけの簡単な魔道具を作って実験開始。

「うまく動くかなぁ?」

 どきどきしながらスイッチを入れると、風車の魔道具が勢いよく回り始めた。

 魔道具に使った米粒くらいの小さな魔石にも魔力はあるから回りはするんだけど、それだけだとこんなに早くは回らないはずだ。

「でも、一度外して、もういっぺん付けてみないと」

 この魔石型乾電池は付けたり外したり出来なきゃ意味ないもん。

 と言う事で、僕は付けたり外したりを繰り返してみたんだけど、何度やっても風車はちゃんと回ってくれたんだよね。

「やった! 魔力の乾電池、ちゃんとできた!」

 こうして僕は、魔道リキッド無しでも魔道具を動かす方法を手に入れたんだ。


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